津田沼IVFクリニック院長のブログ

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津田沼IVFクリニックの体外受精勉強会です。

津田沼IVFクリニックの体外受精勉強会です。  

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 ヒトは、妊娠から分娩に至るまでのすべての過程が女性の体内でのみ行われる「体内受精」をする動物です。

 それに対する言葉が「体外受精」です。

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 左の絵の中で、黄色の大きな丸は女性の卵子、しっぽのある青い小さな丸は男性の精子を表しています。1.5cm位のくぼみに、卵子1個と数十万個の精子を入れます。

 すると左または右の絵のように、たくさんの精子の中で元気な1個だけが「自然に」卵子の中に入っていきます。これが体外受精です。

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 顕微授精とは、左の絵のようにガラス管を用いて卵子に1個の精子を注入し受精する方法です。男性の精液検査で「精子の濃度が薄い」「運動率が悪い」「形が良くない」などの診断を受け、「たくさんの精子の中で元気な1個だけが「自然に」卵子の中に入る」体外受精が出来ない時に行います。女性の抗精子抗体が強陽性の場合や、以前の体外受精で判明した受精障害などで行われることもあります。

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 卵子を育てる排卵誘発から、受精卵を子宮に戻す胚移植までの過程を5つに分けてお話しします。

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 卵胞は通常は月に1個が右下の絵のように自然に発育しますので、この1個の卵子体外受精または顕微授精に使用することができますが、1個の場合は妊娠率があまり良くありません。

 そこで、「排卵誘発剤」という内服薬や注射薬を使用して、より多くの卵胞を育てる排卵誘発法により治療効果を高めることができます。

 

 代表的な5つの排卵誘発法です。

 左上の絵では、左右の卵巣にそれぞれ5個づつの卵胞が描かれています。通常は左右卵巣のどちらか一方に1個の卵胞が育ちますので、排卵誘発剤による治療を受けているときの絵になります。

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 内服薬で卵胞発育を促します。低刺激法のため卵胞は通常は1個となります。シクロフェニルやレトロゾールという薬を使うこともあります。

 40歳以上の方や卵巣機能の低下した方で、注射をしても多くの卵胞発育が期待できない場合などに使用します。

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 クロミフェン法の一例です。

 月経3日目より、クロミフェンを5日間内服します。

 内服数日後の診察で、卵胞の大きさが20㎜位になりましたら、夜10時頃に卵胞を成熟させるためにHCG注射をして翌々日に採卵します。

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 内服薬と注射薬を併用する方法です。これも低刺激法に分類され、平均で3個位の卵胞発育が見られます。

 通院では看護師が腕かおしりに筋肉内注射をしますが、自己注射も対応可能です。

 注射薬には、HMG以外にも数種類あります。

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 クロミフェン+HMG法の一例です。

 月経3日目よりクロミフェンを5日間内服し、卵巣を診察した後にHMG注射を数日行います。

 HMG注射後の診察で、複数の卵胞の大きさが20㎜位になりましたら、夜10時頃にHCG注射をして翌々日に採卵します。

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 自己注射をご希望される方には、看護師が安全・確実に打てるようにご指導致します。自己注射の方法が記録されたDVDや、写真入り資料もお渡ししますので、家でご確認することができます。

 ご家族やご友人に看護師がいらっしゃる方、科は問いませんが注射のみを担当してくださる医院が近くにある方はお願いしていただいても構いません。ペンタイプの注射器もあります。

 注射が怖い方は、無理をせずに通院してください。

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 注射で卵胞発育を促す高刺激法です。平均で6個位の卵胞発育が見られます。

 36歳以下で卵巣機能良好な方などで使用します。

 「土曜日に採卵したい、水曜日は避けたい」など、採卵日をあらかじめ指定することが概ね可能です。

 また、卵巣過剰刺激症候群という注射の合併症の危険性が高い場合には、HCG注射を点鼻薬に変更することにより危険性を大幅に低下させることができます。

 

 アンタゴニスト法の一例です。

 月経3日目よりHMG注射を数日行い、卵巣を診察した後にHMGとアンタゴニスト注射を数日行います。

 これらの注射後の診察で、複数の卵胞の大きさが20㎜位になりましたら、夜10時頃にHCG注射または点鼻薬をして翌々日に採卵します。

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 自然排卵を抑制するための点鼻薬を、やや長く使用することからその名前があります。

 注射で卵胞発育を促す高刺激法です。平均で8個位の卵胞発育が見られます。

 36歳以下で卵巣機能良好な方などで使用します。

 「土曜日に採卵したい、水曜日は避けたい」など、採卵日をあらかじめ指定することが概ね可能です。

 前周期には避妊が必要なことと、2か月の期間を要することが欠点とお考えになる方も多いのですが、注射開始時の卵胞の状態が良くなるという利点があります。

 

 ロング法の一例です。

 前月経周期の後半から、自然排卵を抑制するための点鼻薬を開始します。

 月経3日目よりHMG注射を数日行い、複数の卵胞の大きさが20㎜位になりましたら、夜10時頃にHCG注射をして翌々日に採卵します。

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 自然排卵を抑制するための点鼻薬を、短期間使用することからその名前があります。

 注射で卵胞発育を促す高刺激法です。平均で8個程度の卵胞発育が見られます。

 37歳以上で卵巣機能良好な方などで使用します。

 「土曜日に採卵したい、水曜日は避けたい」など、採卵日をあらかじめ指定することが概ね可能です。

 

 ショート法の一例です。

 月経3日目よりHMG注射と自然排卵を抑制するための点鼻薬を数日行い、複数の卵胞の大きさが20㎜位になりましたら、夜10時頃にHCG注射をして翌々日に採卵します。

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 注射で卵巣を刺激する利点を3つ挙げます。

・より良い卵子を選択して、胚移植をすることができること。

・2回目以降の胚移植の際に、肉体的・精神的・経済的な負担が軽減すること。

・2人目以降の胚移植の際に、肉体的・精神的・経済的な負担が軽減し、採卵当時の若い時の胚が移植できること。卵子の質は当時のままです。

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  卵巣過剰刺激症候群

 排卵誘発剤のHMGとHCG注射を打った後、概ね1週間以内に嘔吐、体重増加、腹部膨満感、下腹部痛などの症状が出現することがあります。

 超音波検査では両側卵巣腫大、腹水貯留などが見られ、血液検査では血液濃縮などの所見が見られる場合があります。

 発症頻度は20人に1人位でその多くは軽症または中等症で、入院を要するような重症は100人に1人位です。注射後1週間を過ぎるとほとんどの人が楽になります。

 多くの予防法や対応法がありますので、慎重に治療を進めていきましょう。

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 排卵誘発によって20mm位の大きさに発育した卵胞の中から、卵子を吸引により採取することです。超音波で左右の卵巣を見ながら、すべての卵胞を吸引します。絵では右卵巣に3個、左卵巣に3個、合計6個の卵胞が見えますが、卵胞1個につき採卵に1分位の時間がかかります。

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 採卵は採卵針という針を使用しますので痛みがあります。採卵中は麻酔を使って、痛みや意識を取ることができます。当院ではご希望の方には、絵のように点滴による静脈麻酔で採卵中は眠っていただいていますが、眠りたくない方には局所麻酔をすることもできます。麻酔をされない方もいらっしゃいます。事前に相談しましょう。

 麻酔をした場合は1時間、しない場合は30分間の安静を保ち、痛みや吐き気、出血などの問題が無いようでしたら私服に着替えます。

 その後、胚培養士から卵子精子の状態の説明と、医師の診察があります。

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 媒精とは、左の絵のように卵子精子を一つの容器に入れた後、精子が泳いで卵子と受精する方法です。体外受精がこの方法となります。

 卵子精子が自然に受精するためには一つの容器内に10万個以上の元気な精子が必要となりますので、精液所見が良好な場合や、自然妊娠歴がある場合、以前に体外受精で受精したことのある場合などに行われます。

 一方、顕微授精とは、右の絵のようにガラス管を用いて卵子に1個の精子を注入し受精する方法です。精子濃度が薄い、精子運動率が低い、精子の正常形態率が低い場合や、女性の抗精子抗体が強陽性の場合、以前の体外受精で判明した受精障害などで行われます。

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 受精後の胚を、培養器という子宮を模した機械の中で育てます。

 体外受精や顕微授精で卵子精子が受精した後、十数時間で前核期胚、受精後1日で2細胞期胚、2日で4細胞期胚、3日で8細胞期胚、4日で桑実胚、5日で胚盤胞と分割していきます。

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 細く柔らかい管を通して、分割の進んだ胚を子宮内に注入します。

 超音波検査で子宮を観察しやすくするために尿を溜めておきます。痛みはなく、通常は2~3分で終了します。

 胚盤胞移植の場合には、将来胎盤になる栄養外胚葉を子宮内膜に向けて着床します。

  胚移植後、7日から12日くらいで妊娠判定となります。

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 左のグラフは年別の出生児数を表しています。横軸右端の西暦2018年では、緑の凍結融解胚移植での出生児は49,383人、赤の顕微授精後の新鮮胚移植での出生児は4,194人、青の体外受精後の新鮮胚移植での出生児は3,402人で、合計56,979人が高度生殖補助医療で生まれています。

 右の表は2018年の出生数です。赤色のように2018年には918,400人が生まれました。

 これらより、2018年の体外受精で生まれた子どもの割合は6.2%、すなわち16.1人に1人が体外受精で生まれた計算になります。

 同じように計算をすると、2008年は50.2人に1人でしたので、この10年で3倍以上とその割合が急速に増えていることがわかります。

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 「これまでの報告では、体外受精そのものによって生まれた子どもの異常が明らかに多くなるという証明はありません。それでも。体外受精による出生児の長期予後については、その後の技術革新の影響も含めてまだまだ不明な点が多く、わが国でも大規模な出生後調査が進行中です。」

 「顕微授精が世界で初めて行われたのは1992年ですので、比較的歴史は浅く、男性のY染色体に起因する妊孕性の低下などが次世代に伝わる可能性など、リスクの有無については今後も検証していく必要があります。」

 「受精卵を凍結しても、その凍結受精卵から生まれてくる赤ちゃんには異常は多くならないと考えられています。」

 私見:現時点で私たち人間ができることは、児の安全性を最優先に考慮して、早産の原因となる多胎妊娠を避けるために複数個の胚をなるべく移植しないこと、体外受精と比較して異常の危険性の高い顕微授精を最小限の施行にとどめることだと思います。

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 体外受精を充分にご理解いただいて、治療に挑戦するか、しないかをご判断ください。

 ご不明なことはスタッフにお問い合わせください。皆様の不安や疑問が少しでも減るようにサポート致します。

 

 是非、来年の今頃は3人家族で楽しく過ごしましょう。

 診察のお申込みをお待ちしております。初めての診察は、月経周期に関係なくいつでも結構です。

 体外受精に挑戦するときは、月経の3日目くらいまでにご来院いただくことになると思います。

 

 体外受精勉強会は以上です。

 ご覧いただきありがとうございました。

 

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